ヒキコモリッチ生活の必須教養!?「坂本タクマの実戦株入門」
2006年11月17日 18:41
(しばた@OHPのオススメ漫画)
さて。筆者は「働かないで生きていく方法はないものか」ということを、日々考えながら生きている。今の生活水準を維持したまま、働かず、極力外に出ずに生きていく。そのために必要なのはやはりお金だ。ではひきこもったままお金を稼ぐにはどうすればいいか。ネットが普及する前の世の中では、ひきこもったまま人に会わずに稼げる手段はごく限られていたし、額もたかが知れていた。しかしネットでの株取引、いわゆるネットトレードの普及が、「ひきこもりのままリッチになる」という夢を、庶民でも手軽に見れるようにしてくれた。
前置きが長くなったが、そんなわけで今回紹介するのは株取引をネタにした漫画である。断っておくが、今回紹介するのはいつものような萌え漫画ではない。本書はコミックバンチで「屈辱er大河原上」を描いていた漫画家の坂本タクマが、「ネットで株やって大もうけしちゃうぜ~ウエヘヘヘ」とばかりに、株取引に明け暮れる日々を描いた実録漫画である。……と聞くと「ソレって小難しい本なんじゃね?」「ハウツーものかよ」と思う人もいるかもしれない。しかし読んでみると、これがなかなかどうして、かなり面白かったりするのだ。
本書で特に面白いのは、作者である坂本タクマの株に対するハマリっぷり。とにかく投資に関するスタンスが徹底しているのだ。最初のうちは普通の株関連漫画みたいに「この株勝ってみました~売りました~損しました~ガックシ」みたいなことをやっているのだが、それが経験を重ねるにつれてだんだん進化。企業の情報(材料)を元にした買いから、株価の数値だけを見て機械的に売買をする「システムトレード」の道へ、ずんずん分け入っていく。
本などで知識を得、勉強を重ねた坂本タクマは、やがて自分で投資を行うときの理論を構築。そのシステムの有効性を検証するためのプログラムを自分で組んで(言語はRubyを使っているのだそうな)、過去20年分の株価データを使ってシミュレーションまでやるようになる。日々の売買記録も事細かに記録。利益率の標準偏差を算出したりと、細かな分析もしまくっている。「漫画家が株やってみました」的作品自体はよく見かけるが、ここまでガチで株をやってる漫画家さんというのは初めて見た。スタンスもかなり徹底している。株取引の心得として「面白さの排除」を掲げ、とにかくリスクは避け、確実性のある儲けを追求していっている。漫画家なのに、大マジで株で食おうとしているのだ。
■「坂本タクマの実戦株入門」 坂本タクマ 白夜書房
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■「面白さの排除」をうたい、淡々と株取引をしつつも、アツい心も持ち合わす坂本タクマ。そのスタンスに男は勃ち女は濡れる(260ページ)
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ではこの漫画、本当に株で勝つための参考になるのかというと、それはズバリ「人によりけり」だ。あんまりズバリな感じじゃないかもしれないが、それも仕方ない。なんといっても坂本タクマは、自身が使っているシステムがどんなものかハッキリとは公開してはいないからだ。というのは「システムを公開して同じタイミングで売り買いする人が増えると、システムが有効でなくなり、自分が儲からなくなるから」という理由による。だから具体的な方法論としては参考にはならないだろう。でもスタンス、投資哲学の部分は参考になるところが多い。
儲け幅は正直なところ、かなり少ない。3年半くらいかかって100万ちょいくらいしか儲かってない。ただそれは元本がそもそも400万くらいなので率としてはまずまずといえる。何より損をしていないというのが凄い。ライブドアショックのときもほとんど被害を受けずに乗り切っていたほどだ。単行本の最後のほうになると、儲けが10万を超える月がじょじょに増えて来ていて、見ていると「このままシステムに従ってやっていけば、そのうち元本が雪だるま式に増えて、すごい儲けになっちゃうんじゃないの?」的な予感も漂わせている。
あと漫画としてもちゃんと面白い。株の話やシステム構築の話をしまくっているのだが、ユーモアがたっぷりなので堅苦しい雰囲気になることはないし、けっこう下らない部分も多いので肩の力を抜いて読める。株の知識がなくても分かりやすく読めるようになってるのもいい。まあそんなわけで、読んでいると刺激を受けまくって、ムラムラと「株やってみてぇ~」という気持ちが湧いてくる。「ネットで一もうけ」を企んでいる人はぜひ読んでみるといいと思う。読んだからといって儲かるわけじゃないけれど。
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