貞子かわいいよ貞子「君に届け」
2006年10月13日 21:37
(しばた@OHPのオススメ漫画)
今回紹介する「君に届け」は、「学校の貞子さん」の物語だ。といっても怪談ではなくて、見た目はちょっと怖いけど、実はすごくピュアでカワイイ女の子のお話だ。読むと心がとてもあたたかくなる、とても良い作品なので、広くオススメしておきたい。
本作の主人公・黒沼爽子(くろぬま・さわこ)は、まるで栗山千明のような「髪が伸びる日本人形」的ルックスの持ち主。長い黒髪やキレ長の瞳、引っ込み思案な性格などなどのおかげで不気味がられ、小学校時代からずっと「貞子」というあだ名をつけられ恐れられて来た。学校の同級生たちは「関わると不幸になる」「呪われる」だのなんだの、貞子に対して好き勝手なことをいいたい放題。実際の貞子は、霊感も霊能力もなく、すごく他人想いで優しい女の子なのだが、引っ込み思案で人付き合いが苦手なので、周囲の噂を否定できないでいた。
しかしある日、そんな彼女に転機が訪れる。クラス1のさわやか男子・風早くんが貞子の心の美しさ、そして彼女がよく見るとすごくかわいい女の子であることに気づき、二人は仲良くなっていく。風早くんの支えもあって、貞子はだんだん前向きになっていき、その努力は周囲にも認められ、クラスメートにもちょっとずつ受け入れられるようになっていく。
■「君に届け」1巻~2巻(以下続刊) 椎名軽穂 集英社
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■クラス一のさわやか男子・風早くんは、貞子の魅力にいち早く気づく。また吉田さん&矢野さんのヤンキー風女子コンビも、情に厚い、いい娘さんたちである(第1巻169ページ)
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とまああらすじはこんなところなんだけど、この作品でいいのが、貞子がとてもいい娘さんに描けていること。笑うとすごくカワイイというのもあるんだけど、何よりそのピュアすぎるほどの性格が素晴らしい。子供のころからずっと怖がられて来た彼女は人付き合いに慣れていない。そのおかげで、クラスメートから話しかけられただけで、ジーンと感動して泣きそうになってしまう。悪い噂を立てられても不平不満一ついわず、それどころかなんとか周囲の人たちの役に立とうと、クラスの雑用を引き受けたりと、すごく一生懸命。その頑張りや健気さを見ていると「今どきこんないい娘さんがいるなんて……」と心が揺り動かされてしまう。人慣れしていないがゆえの、ちょっとズレた、素っ頓狂な行動も結構笑える。
本作ではそんな彼女が、だんだん周囲に受け入れられ、少しずつ友達を作っていく様子が描かれていくのだが、これがまたイイ。さわやか男子・風早くんとの触れ合いと、恋愛感情の芽生えはとても爽やかで清々しいものがあるし、学園友情ストーリーとしてもよく出来ている。とくに印象的なのが、貞子に対して偏見を持つことなく接してきたヤンキー風のクラスメート女子コンビ、吉田さん&矢野さんとの友情を描いたエピソード。彼女たちと貞子の日常のやり取りはすごく楽しいし、「友達ができる」ということに対しておっかなびっくりな貞子のピュアさ加減、2人への思いやりの深さに、思わずホロリとさせられてしまう。第2巻ではトラブルがあって3人の関係がぎこちなくなるが、それをみんなで乗り越えていくあたりは、お話的にもすごく盛り上がってて感動の嵐である。
本作の掲載誌は「別冊マーガレット」ということで、単行本はもちろん少女漫画コーナーに並んでいる。このサイトにおいでいただいている方たちは、たぶん男の子率のほうが、女の子率に比べていくぶん(っていうか激しく?)高いんじゃないかなーと愚考するしだいだけど、本作は男が読んでもたぶん問題なく楽しめると思う。ピュアで爽やかで暖かくて、しみじみいいお話なんで、書店などで見かけたらぜひぜひ手にとってみてほしい。
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